劣化ウラン兵器禁止に向けた 国際的運動との連帯のために


<欧州で行われた二つの国際会議>

湾岸戦争やコソボなどでの劣化ウラン弾使用による深刻な「被害」の訴えにもかかわらず、米・英軍はアフガニスタンに続き再びイラクで劣化ウラン弾・クラスター爆弾などの「無差別殺りく兵器」を使用した。世界中で戦争反対の声が高まる中、今後、これらの兵器の禁止に向けた国際的な運動をどう展開してゆくかが問われている。このような重要な時期に、劣化ウラン兵器に反対する二つの国際会議がベルギーとドイツでそれぞれ開かれた。(「ヒバク反対キャンペーン」からはハンブルク会議のみの参加であったが、そこでのベルラール会議参加者との交流を通じて得た情報なども含めて報告する。報告:振津かつみ)


★ベルラール会議〜「ウラン兵器禁止を求める国際連合」の結成と呼びかけ

10月10〜12日、ベルギーのベルラールでウラン兵器禁止を求める国際的な「連合」の結成に向けた準備会が行われた。これは「国際劣化ウラン研究チーム」(IDUST)のダマシオ・ロペス氏らが中心となって、いくつかの団体とともに呼びかけたもの。(ロペス氏は、劣化ウラン弾が使用された試射場のある、米国ニューメキシコ州サッコロ市の活動家。市民調査団としてイラク訪問、劣化ウランの危険性を訴える欧米での講演ツアー、国連での報告を行うなど、国際的にも活躍中。「知られざるヒバクシャ」田城明著P80にも紹介されている。)それぞれの地元で劣化ウラン反対や平和運動などに取り組んでいる活動家・専門家など8ヶ国から約30名が参加。日本からはこの会議の組織団体のひとつでもある「NO DU ヒロシマ・プロジェクト」から嘉指氏が参加。各地からの報告とあわせて、「地雷禁止」を求める運動に長年取り組んできたNGO(Handicap International)のメンバーからの報告も受け、その経験にも学びながら、劣化ウランの国際的禁止を求めるキャンペーンをいかに進めるかについての議論が行われた。劣化ウランとその被害についての科学的レビュー、疫学・環境汚染調査の提案、NGOと国連や各国政府などへのロビー活動、諸団体との協力の下での国際共同行動、汚染除去技術の調査検討、インターネットやビデオなど様々な手段を用いてキャンペーンを拡げるなどの様々な課題と提案、それらを具体的に進めてゆくためのワーキンググループ、事務局体制や財政的問題も含めて話し合われた。そして「ウラン兵器禁止を求める国際連合」の結成と参加の呼びかけ声明を作成し、会議終了後の13日にブリュッセルで記者会見を行い、世界に向けての第一声を発信した。

(「呼びかけ」文の日本語訳はhttp://www1.odn.ne.jp/hibaku-hantai/DU-kikaku/DU.htm 
でもダウンロードできます。
「国際連合」ホームページは http://www.bandepleteduranium.org/index.php   あわせてご参照下さい。 )


★ハンブルグ会議〜運動の交流と議論の中で明らかになってきた課題

10月16〜19日、ドイツのハンブルクで「世界ウラン兵器会議2003」が開かれた。これはドイツの「核兵器廃絶のための非暴力行動」(GAAA)(1996年に創設されたNGO。国際法廷の「核兵器は国際法違反」の判決を受けて開始された非暴力直接行動。)が中心になり呼びかけたもの。イラクを含む20ヶ国から約100名余り(主催者発表200名)の劣化ウラン反対や平和運動、反グローバリゼーションなどの活動家や専門家と、退役軍人・遺族などの被害者が参加した。(日本からも各地で戦争反対・劣化ウラン反対などに取り組む人々等、約20名が参加。)


初めの2日間は、科学者・被害者・国際法専門家・市民活動など各分野別の「予備セッション」報告があった。「科学者のセッション」では、ウラン微細粒子の体内被曝の危険性、イラクの環境放射能汚染と住民、特に子供達の癌・白血病・先天障害の増加、湾岸戦争とコソボからの帰還英兵の抹消リンパ球の染色体異常、劣化ウラン弾の被災によって細胞以下の極微小レベルにウランだけでなく様々な重金属が沈着して傷害を引き起こす(ナノ・パソロジー)可能性などについての報告がされた。低線量慢性被曝とアルファー粒子の体内被曝の評価について、イギリスのクリス・バスビー氏(「低線量キャンペーン」代表。放射線リスク欧州委員会勧告ECRR2003の編纂を中心的に担った。)らからの新たな問題提起もあり、国際放射線防護委員会(ICRP)への批判も含めて理論的に整理検討をする必要性を改めて痛感した。「被害者のセッション」では、亡くなったカナダの湾岸戦争帰還兵士の妻、スペインの白血病で亡くなった若いコソボ帰還兵のガールフレンドの証言があり、最愛の人を失った彼女達の訴えは強く人々の胸を打った。また、米国・オーストラリアの帰還兵の証言では、自身も含めて多くの帰還兵が「湾岸戦争症候群」などの健康障害に苦しめられている現状、治療と補償を求める訴えなどがされた。「国際法のセッション」では国連でのロビー活動を中心に劣化ウラン兵器の国際法違法性を問う取り組み(カレン・パーカー氏)、「劣化ウラン禁止条約」案文の提案(M.モーア氏、ドイツの国際反核法律家協会IALANAと核戦争に反対する国際医師の会IPPNWの共同提案として)、WHOの放射線影響評価に関する国際原子力機関 (IAEA)からの統制に対する批判などがされた。「市民運動のセッション」では、オランダ航空の事故被害など劣化ウランの「市民利用」の問題も含めて、各国NGOの取り組みの紹介がされた。アフガン出身者から、米国による自国への攻撃・殺りくに対する暴力による報復を支持する感情的な発言がなされたことに対し、議論の中で、運動における「非暴力の原則」が改めて確認されるという場面もあった。(参加者の報告の詳細は、紙面の都合で掲載できませんので、今後の学習会などで適宜、紹介し、皆さんと議論したいと思います。)

後半2日間は、三つのワークショップ(科学者/活動家/退役軍人、市民への働きかけ)に別れて議論し、各ワークショップの報告を受けて最終日に全体で「決議」を議論・採択した。しかしその後、会議のホームページに公表された「決議」は、なぜか「科学者」のワークショップの議論の一部をバスビー氏がまとめたもの(劣化ウラン被害についての科学者のコミュニケ/汚染地域の包括的な調査の必要性/ICRPリスクモデルの批判/「自由大学」設立。これらの日本語訳については「ヒバク反対キャンペーン」のホームページ http://www1.odn.ne.jp/hibaku-hantai/DU- kikaku/DU.htm でもダウンロードできます。)だけにとどまっている。また、それらを具体的に進めてゆくための運動の体制の提案などはされなかった。

被害者はもちろんのこと、世界中からこの問題に関心を寄せる人々が集まり、運動の交流と意見・情報交換ができたことは、今後の運動にとっても意義深いことであったと思う。また、会議の「表舞台」と「裏舞台」の両面でのさまざまな議論を通じて、今後の国際的な運動の問題点なども明らかになってきたのではないかと思う。

ベルラール会議の参加者の多くは、引き続きハンブルク会議にも参加し、報告と議論に積極的に加わった。会場では「劣化ウラン禁止連合」の呼びかけ文も配布され、新たな支持者も加えた。


★今後の運動の方針をめぐって、何が焦点になったのか

今後の運動の主要な方針をめぐって、ハンブルクでは「禁止条約」か「現行の国際法」かという形で問題が提起された。本来的には「禁止条約」と「現行の国際法」は、二者択一の相反する課題ではないはずである。しかしカレン・パーカー氏と彼女に強い信頼を寄せるハンブルク会議の主催者は、「新たな禁止条約の提案は現行法を軽視し、米国などを利することになる」などの理由を述べ、一方の運動を否定し、「今後の運動においては<禁止>という言葉は使用すべきではない」とさえ主張した。結果的に運動方針としては、具体的な「禁止条約(案)」を掲げて国際的な「草の根」の運動を下から組織してゆくのか、現行の国際法の枠内でも「すでに劣化ウラン兵器は禁止されている」として、国際法の専門家を中心とした国連などへのロビー活動に力点を置くのかという形での議論となってしまったように思う。このような方針上の意見の相違は、今後、実際に国際的な反劣化ウラン兵器の運動を前進させてゆく中で、議論を深め、克服してゆくしかないと思う。

確かに現行の国際法(ジュネーヴ協定とその追加議定書など)でも、劣化ウラン兵器のような「無差別殺りく兵器」の使用は理論的には禁止されており、運動の側もそれを楯にとって米・英国などの劣化ウラン兵器使用国に圧力をかけてゆくことも重要である。しかし「理論的には禁止」されていても、実際には使用され続けている現実があり、また、現行法での「禁止」はこのような兵器の使用に関するもので、生産・貯蔵・試射などには及んでいない。禁止にあたっての具体的検証や、さらには被害者の救済なども問題になる。それらを包括的に扱った「禁止条約」を求めることは、現行法で圧力をかけることと同様に重要な課題ではないだろうか。(私達も、今後この問題についても、理論的に整理し、皆さんと議論をしてゆきたいと思います。)

<劣化ウラン兵器禁止と被害者の救済・補償を求めよう?国内外の「草の根」の運動と結んで>以上のような、国際的な運動の現状と課題をふまえ、「ヒバク反対キャンペーン」としても、「ウラン兵器禁止を求める国際連合」のキャンペーンにも積極的に加わりながら、国内外の運動と連帯して劣化ウラン兵器禁止と被害者の救済・補償を求める運動、また、被害を科学的にも明らかにしつつ、その実態を広く知らせてゆく活動を強めてゆきたい。その中で、劣化ウラン兵器禁止の運動と、クラスター爆弾などの他の「無差別殺りく兵器」の禁止を求める運動、反核平和・反原発運動、世界のあらゆるヒバクシャの運動との連帯も追求したい。そして、何よりも今、イラクの人々の主権を踏みにじり、米・英軍などによる占領に加担すべく日本政府がイラクへ自衛隊を派遣しようとしていることに対して、抗議・反対の声と行動を強めよう。(2003年12月7日)